バンラートの突風被害状況報告


 5月10日夕方に三度目の突風が発生し、前二回よりも大きい被害がバナナ圃場に発生しました。15日に現地に行き状況を確認して来ましたので以下報告します。

 まず全体の被災状況ですが23圃場、4,770本が直接被害。ルムサモー地区が最も被害が大きく、被災本数全体の88.9%に相当する4,228本が被災。被災率50%を超える圃場もこの地区に集中しており、5圃場が最大で88%の被害を被っています。

 この日は今回最大の被害を受けたトーンバイ・ミーマノーさんの圃場を最初に訪問しました。トーンバイさんは3つの圃場で合計2,300本を栽培してきましたが、うち1,340本が被災。なかでもこれから収穫ピークに入ろうとしていた1,200本植えの大圃場(二番苗)が、1,050本も倒されました。圃場を見せていただきましたが、立派な実をつけたたくさんのバナナの木が無残な姿で横たわっていました。ご本人とご家族がちょうど圃場のすぐ近くで栽培している唐辛子の収穫をされていたのでお話を伺いました。

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 「親父の代からずっと農業をこの畑でやってきてるけど、こんなに強い風が吹いたことはこれまで一度も無かった。今回が初めてだよ。農協からお金を借りてバナナを植えた。このバナナを農協に出荷して返すつもりだったんだが・・・・。農協がきっと補助をしてくれると思うけどね。今後はどうするかって?もちろんまたバナナを植えるよ。突風なんか怖いとは思わねえよ。吹いたら吹いたときのこと。日本の皆さんに何かして欲しいかって?ん~、農協が被災農家の支援で大変だからその農協を支援してやって欲しいな」

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トーンバイさんの大圃場

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収穫を間近に控えたバンチも無残な姿に


 もう一箇所、同地区で1,000本を超える被害を受けたのがウォーラヌット・マーペオさん。1,500本のうち1,020本を被災しました。収穫が始まってまだ数週間、出荷できたのはまだわずかに200バンチほどしかなく、残りはこれから、というときの被害。ご夫妻がちょうど在宅中でしたのでお話を聞けました。

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 「あの日は午後出掛けたんだけど、出掛ける前はいつもどおりのバナナ畑だったのが、夕方帰ってきたら様変わりしていた。あれだけ立派になっていたバナナが全部倒れていた。もちろんすごいショックだった。」
「倒されずに残った分が少しある。その収穫が終わったらまた植え直し。今後二ヶ月の間に植えれば、今度は風に逢わないタイミングで収穫できるから。ここでのバナナ作りで怖いのは風だけ。旱魃も寒波も洪水も怖くは無いよ。何とか対処できるからね。でも風だけは予告なしに来るから、どうしようもない。それでもバナナを植えるのはなぜかって?・・・植えたいから。」

 この「植えたいから」の言葉がすごく印象に残りました。なぜ植えたいのか、って聞くのは野暮だと思って聞くのを止めました。それだけ彼女の言葉に力強さを感じたのでした。

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ウォーラヌット圃場

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自宅家屋が防壁になり、生き残った部分もあり。こちらは比較的順調でやや安堵。


 これ以外にも同地区では今回の被害とすでに収穫された分を合わせて圃場の半分近くに達した生産者が残りの収穫を諦めて(風の影響で品質が劣下するため)全面植えなおしたケースもありました。
 いつもいつものことですが突風や洪水にもめげることなく、七転び八起きで栽培を地道にやり直そうとする生産者の姿に素直に頭が下がる思いです。しかも彼らには悲愴感はなく、常に明るさに満ちています。

 さて今回の被害の出荷量への影響ですが、現在詳細については現場で検討作業を進めています。ただ概況を見るとルムサモー地区からの今後二ヶ月の収穫がほぼ期待できなくなったと考えてよいわけで、予測値から推測する限りでは同地区からの収穫はこの時期増加に向かっていくはずでした。だいたい月10トン~12トンを見込んでいた(6月~7月)ようですので、週換算でだいたい2.5~3トンということになります。これに他地区の被害なども合わせればだいたい週3~4トンが消えてなくなった、といったところでしょうか。